
東京五輪の贈賄事件をうけ、産経新聞が「スポーツ界の「ゆがみ」露呈 広告業界に過度な依存」という記事を出した。しかし広告業界に過度に依存していることが本当に問題であるのだろうか。
スポーツ界はスポンサーありきのビジネスである
スポーツ界はスポンサーありきのビジネスである。何を言っているんだと思う人もいるかもしれないが、商業五輪の原点とされる1984年ロサンゼルス五輪以降、スポーツ界はスポンサー依存を強めたのは事実だろう。
世界に目を向ければ、1968年にウィンブルドン選手権が賞金制を採用し、1974年にオリンピック憲章からアマチュアの表現は消えたのだ。アマチュアスポーツだったラグビーは1995年にオープンプロ化を果たした。日本においても、プロ化ないしそれに類するリーグ変遷はここ数年顕著におこなわれてきたのだ。
日本においても、リーグとしては野球(NPB)ぐらいプロスポーツは、サッカー「Jリーグ」1993年に始まり、バスケの「B.LEAGUE」は2016年、卓球の「Tリーグ」は2018年、バレーの「V.LEAGUE」は2018年、ラグビーの「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」は2022年に始まった。ハンドボールも分裂問題はあるものの2024年にプロリーグを開幕させる予定だ。
アマチュアスポーツである限りは、基本的には大会があればよかったのだ。しかし、プロである以上選手年俸は最低限なければいけないし、実業団チームのように社員給与というわけにはいかない。プロである以上、興行として試合を行い収入を行わなければいけない。放映することで、お金を集めなければいけないのだ。
興行として試合を行うといっても、入場料だけで選手の給与が払えるわけはないのだから、結局はスポンサーがなければ始まらない。スポーツ界はスポンサーがなければなりたたないのだ。
各競技団体の日本協会も広告業界とつながってはいる
結局、つなぐノウハウがないのだから仕方ない点はあるだろう。
JBA(日本バスケットボール協会)傘下のB.MARKETING株式会社の株主は、電通だ。
Jリーグのマーケティングパートナーは電通だし、JFA(日本サッカー協会)のマーケティングパートナーも電通、2019年のラグビーワールドカップのマーケティング販売権も電通だった。
2006年にラグビー協会は電通とマーケティング業務の業務委託をしているし、ラグビーの代表マッチの会場近隣のイベントにも普通に電通スタッフはいるのだ。(2022年7月のフランス戦の時は、リポビタンDブースに電通スタッフはいた。)スーパーラグビー参戦の時の法人にも電通所属の理事はいたわけだ。
大相撲でさえも電通が絡んでくるのだ。
プロ野球の交流戦は博報堂だし、野球日本代表「侍ジャパン」のマーケティングパートナーも博報堂だ。
別にこれらが悪いわけではない。しかし、結局のところスポーツ業界はスポンサー料が必要で、それを集めるべき存在であるマーケティングパートナーは必要不可欠なのであろう。
結局のところ「みなし公務員」だから捕まっただけ?
結局のところ、すべては「みなし公務員」であるかどうかに過ぎないのであろう。
大会特別措置法(令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法:平成二十七年法律第三十三号)により、組織委員会が組織されている以上公務員だ。
「みなし公務員であることを知らないはずがない」という弁護士もいるようで、当然そのようにも思えるが、長年のスポーツ業界はそもそもこの流れの中で行われてきたものなのではないだろうか。
スポンサービジネスがスポーツ業界にはびこるようになって、日本開催では一番大きかった大会だ。
もちろん、サッカーワールドカップやラグビーワールドカップでも特別措置法はある。(平成十四年ワールドカップサッカー大会特別措置法(平成十年法律第七十六号)、平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法(平成二十七年法律第三十四号))しかし、そこまで大きな組織として国を揚げて行ったものではないのだ。
ここ30年のスポーツビジネスの流れをそのままオリンピックに適用した結果、「みなし公務員」だから捕まったとみてもおかしくはないような気がしてならない。
本当に代理店依存から脱却する必要はあるのか
記事では結びで以下のことが指摘されている。
過度な「代理店依存」から、どう脱却すべきなのか。五輪の歴史に詳しい筑波大の真田久特命教授は「スポーツビジネスでは透明性確保が求められるが、企業秘密などもあり契約内容の公表は難しい」と指摘。その上で「非公開でも第三者機関が常に監視できる体制が必要だ」と話した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8d3c712704894491685dea7776faa4f9491526eb
しかし果たして本当に「代理店依存」から脱却するべきなのだろうか?そしてそれが本当に健全な姿なのだろうか。
もちろん、理想論を言えば代理店がないのがきれいだろう。しかしながら、日本ではビジネスとしては大きいプロ野球やJリーグですら、広告代理店と密接にパートナーシップを築いているのが現状である。
そう思うと、広告代理店依存から脱却すること自体無理な話であるし、それをした結果日本のスポーツ界が低迷するなんてことを引き起こしかねないような気もしてくる。
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