国会、特に委員会の会議録を見て思うのだ。やはり無駄が多いのではないか、と。儀式的な面がやはり多くてやっている価値が感じられないのだ。
現状出ている委員会会議録は内容がないものがある
基本的に内容はない。国会が召集されると第1回が開かれるが、そこでは委員長や理事の欠員が補充される。ここで国務大臣や政務官の挨拶がある場合(環境委員会)もあるが特別委員会を見てみよう。
衆議院 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会
第1号:委員長の選出、理事の指名(3分)
第2号:連合審査会開会申入れの議決(1分)
第3号:拉致問題担当大臣、外務大臣、国家公安委員長、副大臣、政務官の挨拶・報告。(16分)
と、3回やっているがここまでに進んだのは報告と挨拶だけだ。特段なにも進んでいないのだ。
散見される無駄な質疑
「参議院 地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会 第3号」の言い争いもばかばかしいものだ。河野太郎大臣に対する岸真紀子参議院議員の質疑である。
○岸真紀子君 立憲民主・社民の岸真紀子です。
第210回国会 参議院 地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会 第3号 令和4年11月9日
河野大臣、覚えているでしょうか。立憲民主党は、二〇二一年の三月八日に、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種に関して、当時のワクチン担当大臣でしたので、喫緊の課題として大臣室で要請書をお渡しをして意見交換をさせていただきました。実は、私もその場に同席をしておりまして、大臣にもお話をさせていただいたところです。
その中で強くお願いしたのが、ワクチン接種に遅滞、混乱が生じないシステムを求めてきたんです。
具体的な内容としては、ワクチン接種記録の管理にマイナンバーを活用することは一概に否定されるものではないんですが、今回は厚生労働省と自治体が接種台帳とV―SYSの活用を前提に非常に繁忙な体制構築を進めていることから、これ以上の新システムの導入はかえって混乱を招くこと、おそれがあると、緊急を要する今回のワクチン接種にはマイナンバーの使用は見送ることを申し入れたところです。
この言わばVRSというワクチン接種記録システムというものなんですが、これを突如、当時つくるというふうに言い出して、四月に運用するという状況下での出来事です。
このニュースが出た途端に、自治体の現場では大変困惑をして、どのようなシステムができるかも分からないし、V―SYSとか自治体独自の記録台帳があるので、それで進めようと思っていたのに全部やり直しをさせられたところです。
私からも口頭で、新しいシステムつくることは否定はしないと、これからデータ化をして、大事であるとは思うんですが、運用時期をせめて四月じゃなくて、当時もうとても混乱していたので、四月ではなくてもう少し遅らせていただけないでしょうかということを申し入れました。
しかし、大臣は、このVRSというのがなかったら市町村間をまたいだ接種が打てないとかという、確かにそういう理由もあるんですが、つくらなきゃいけないんだといって聞いてくれなかったというのが実態です。
中島克仁、逢坂誠二、重徳和彦各衆議員もいて、私のことは大臣覚えていないかもしれませんが、首長経験である逢坂誠二衆議院議員からも、大臣に対して、ワクチン、このワクチンというのは、二回目、三回目、今はもう四回目、五回目と行っていますが、この先もずっと打っていくんだから慌てなくていいんじゃないかと、今、それよりも自治体現場は必死に一回目の準備をしているので、システムに問題があったら対応ができなくなるということを申し入れています。
こういったやり取りを大臣は記憶、覚えていらっしゃるでしょうか、まずお伺いします。
○国務大臣(河野太郎君) 昨年のワクチン接種、各党会派からいろんな御要望をいただきました。VRSについてもいろんな御意見がありましたけれども、あれをやっていなかったら更なる大混乱が起きていたと思いますので、新しいことをやるときにはいろんな人がいろんなことを言いますけれども、やっぱりきちんと物事は決めてやる、それが大事だと思っています。
○岸真紀子君 覚えていらっしゃったということでよろしいですかね、各党からいろんな意見を言われて。
そのVRSの問題なんですが、では、デジタル庁に確認をしますが、ワクチン接種会場などでどんなトラブルがあったかというのをお答え願います。
○国務大臣(河野太郎君) VRSの導入当初、なかなか読み取りに時間が掛かるといったことがありました。これは、バーコードあるいはQRコードを最初から予診票に入れておけばよかったんですけれども、そういうことが必須ではないということで、OCRラインを読まなければいけなかったというようなことがございましたが、まあそういうことはありましたけれども、これ紙でやっていたらこんなことでは済まなかったんで、VRSを入れたメリットというのが最大限発揮されたと思っております。
○岸真紀子君 大臣はそのようにおっしゃるし、デジタル庁としてもこれは必要だったということをおっしゃるんですが、やっぱり当時は相当混乱を来していたことは本当に厳しく指摘をせざるを得ない実態にあります。
デジタルの利活用というのは、データをデジタルで管理したり流れも円滑化することによって労力の削減や人為的なミスを防ぐ、またその後の二次利用、例えばこのVRSであれば今はワクチン接種証明に使っているので、そういったことからいえば、後からでもシステムを改変すれば使えるというメリットは否定はしません。
しかし、混乱しているときに迷走するシステムを押し付けられた、強要されると、当時のように二度手間、三度手間、後々、七十センチの台を置いてタブレットを置いて読み込むとか、読み込んだ後に数字が誤って入力をされるので、結局もう一回残業をしながら全部の確認をしなきゃいけないというような、自治体ではそういった混乱が招いています。
もっと言えば、ワクチンの供給量も足りなくなって、残念ながらワクチンをキャンセルしなきゃいけない、そのキャンセルの電話に数分、数分どころか何十分と時間を取って、なおさらこういった混乱が自治体の現場に生じています。自治体の現場が混乱を生じるということは、残念ながら、住民の方にそれだけワクチン接種が滞って遅くなってしまうということになるので、本当に大きな問題だと感じています。
デジタル庁も、かといって、これを障害を起こしたくてやったわけではないのは重々承知しています。それはもうもちろんです。
これからも各省庁、なぜこれを、じゃ、もう一回ぶり返して言っているかというと、これからも各省庁のシステムにも関わっていく上で忘れていただきたくないというのが現場目線ということなんです。現場が使いづらかったり、そのシステムによって住民の暮らしがどうなるのかということを重きを置いていただきたいということで、再度これを持ち出させていただきました。
その点、河野大臣はどのようにお考えか、お伺いします。
○国務大臣(河野太郎君) 委員は大きな考え違いをされていると思いますが、VRSを導入していないで紙でやっていたら、あんなことでは済まない、自治体の疲弊はもっともっとひどかったと思います。最初からVRSを導入したからこそ、様々なワクチンの量が把握をできましたし、ワクチン証明書を出すときにもスムーズにいったので、あれをVRSを使わずに紙でやっていたら、こんなことではなく、自治体はもっともっと疲弊をしていたんだと思います。
○岸真紀子君 大臣、お答えいただいていない。現場の目線がこれからのシステムに大事だということを今お伺いしているので、その点について再度お願いします。
○国務大臣(河野太郎君) 現場目線でこれが必要だから入れたわけでございます。
○岸真紀子君 ここに余り時間を取りたくないんですが、これからの各省庁とか自治体のこれからシステム運用をするに当たっての目線として現場の声が必要ですよねという確認をさせていただいているので、その点について再度お伺いします。
○国務大臣(河野太郎君) 現場のことが必要だというんだったら、VRSを入れるなというような暴論にはならなかったと思います。
○岸真紀子君 随分かみ合わないのでこれ以上言いませんが、VRSを入れるなというわけではなくて、導入は少し慎重になるべきだったということを、これを指摘はさせていただいているところです。ただ、これ以上やり取りをしてもなかなか進んでいきませんので、次の質問に入らせていただきます。
新型コロナウイルス感染症ワクチン接種証明書についてお伺いをしますが、現在、マイナンバーカードを持っている人しか電子版というのは発行されないという実態に、アプリですね、若しくは申請自体もカードを持っていないとオンラインでできないという実態にあるんですが、住民の利便性を考えると、改善できないのかなと考えるところです。例えば、その人しか知らないワクチンの情報とかが手元にあるんですし、素人考えで申し訳ないんですが、私はできるんじゃないかなと。しかも、悪用するような、ワクチン接種証明書って悪用するようなものではないので、マイナンバーカードの普及促進を優先して考えなくてもいいのではないかと思うんです。
あえて、カードでなければ申請できないということがちょっと私には理解ができないのですが、カードがなくてもシステムはつくれないものなのか、ワクチン接種証明書だけではなくて、その他のこれから電子申請においてもカードありきでなければならないという考えにとらわれない方がいいのではないかと思うんですが、この点についていかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) ワクチン接種証明書に関して申し上げれば、マイナンバーカードをお持ちでない方でも、紙での申請、紙での発行ということをやらせていただいております。利便性を考えてマイナンバーカードでしっかりとこれからもシステム進めていきたいと思っております。
○岸真紀子君 どうにもこう答弁がかみ合わないというか、質問の意図が分かってもらえないんですが、カードありきということで考えてしまうと、紙での発行というのはできてはいます。ただ、それの紙での発行自体も申請はオンラインでできない実態にあるんですね。だから、そういったところを、DXを進めるというんであれば必要なのではないかということで、こういった質問をさせていただいています。
ワクチン接種証明がマイナンバーカードを持っていなければできないので、実際に申請数が、カードの申請数が増えたとも聞いています。しかし、例えば、十月から実質の制限が解除されて、旅行に行きたい方、証明書を申請しようと思う方がその時点でマイナカードを申請しても、発行には一か月から二か月掛かるので、それでは現状間に合わないと。役所に行くか、郵送でやり取りしなければならない状況にあるので、こういったことを本当であればもっと改善すべきではないかということを再度申し入れておきます。
と、もう何から何までかみ合っていない。質問の仕方がそもそもよくないように思う。蛇足が多い。国会質疑ってこういうものではあるが、なかなかに不思議なものだ。
デジタル社会の話をしているのに、ワクチン接種のことにとらわれて、なぜかワクチンの供給量が足らない話が出てくる。もちろん河野氏が担当大臣だったから別にいいともいえるがこれは「地方創生とデジタル社会の形成に関する委員会」なのだ。
岸氏は「運用時期をせめて四月じゃなくて、当時もうとても混乱していたので、四月ではなくてもう少し遅らせていただけないでしょうかということを申し入れました。」と発言しているが、そもそも遅らせる方が面倒だ。現にワクチン証明書の発行について岸氏も触れているわけだが、遅らせるということはその分のデータは登録されていないわけで、誰が登録するというのだろうか。それこそ二度手間であって仕事が増える。
「しかし、混乱しているときに迷走するシステムを押し付けられた、強要されると、当時のように二度手間、三度手間、後々、七十センチの台を置いてタブレットを置いて読み込むとか、読み込んだ後に数字が誤って入力をされるので、結局もう一回残業をしながら全部の確認をしなきゃいけないというような、自治体ではそういった混乱が招いています。」とも言っているが、その発言の前に「バーコードあるいはQRコードを最初から予診票に入れておけばよかったんですけれども、そういうことが必須ではないということで、OCRラインを読まなければいけなかったというようなことがございましたが」と河野大臣が発言しているのがすべてだろう。
そもそも岸氏は、自分が思っている回答が得られなければ納得できないのだろうか。想定通りの流れでないと対応できないのだろうか。
加えて岸氏は
既にほかの委員会でも衆参問わず質問をされていると承知をしていますが、岡田大臣が代表となっている自民党石川県参議院選挙区第二支部の政治資金収支報告書から、宣伝事業費の広報掲示板管理料を計上し、地元有権者に買収疑惑とも取れる支出がされている問題に、岡田事務所としてはあくまでも維持管理への対価と説明をされていますが、これは大臣、金額も含めて買収と取られても仕方がないのではないかと思うんですが、その点について再度お伺いいたします。
第210回国会 参議院 地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会 第3号 令和4年11月9日
という発言をしており、そういうことをどこでも質問したいなら「政治資金委員会」でも作ればいいんじゃないかとさえ思ってしまう。
委員会はあるべきではあろうが、今の形は適切なのか
国会は、国会議員だけで運営されているものではないことを忘れてはならない。
委員会の答弁に関しては、以下のステップを踏むこととなる。
第1段階 国会待機‥どんな質問が出るのかを待っている段階。
国会答弁が完成するまで、小峰隆夫、日本経済研究センター、2019/10/16
第2段階 質問の割り振り‥政府に質問が出た場合、どの省庁が答えるかを決めて、当該省庁に質問を伝達する。伝達を受けた省庁では、今度はどの組織が答弁を作成するかを決めて、当該部局に質問を伝達する。
第3段階 答弁の作成‥割り振られた部局が、答弁書の原案を作成する。
第4段階 関係部局との合議(あいぎ)‥答弁書の原案に対して、総務課、関連する部局が意見を出して、必要に応じて調整する。他の省庁に関係する場合は、他の省庁に原案を見せて意見を貰う。予算に関連するような答弁の場合は、財務省(私の現役時は大蔵省)主計局に見せて了承を得ておく。
第5段階 答弁者への連絡‥通常は秘書官を経由して、大臣に答弁書を渡す。総理答弁の場合は、官邸に答弁書を届ける。
第6段階 答弁者への説明‥大臣に説明が必要な場合は、翌日(つまり質問当日)の朝早く、委員会が開かれる前に国会内で大臣に説明する。
第7段階 答弁‥委員会の場で答弁する。
どんなにくだらない質問であったとしても官僚が働いているのが現実で、それなりの答弁を起こしているはずだ。もちろん先の例に挙げたような言い争いのような場面まで想定して作るわけではないだろうが、資料を作り説明しているわけだ。
デジタル分野に関していえば、現行の国会の進め方にとらわれずにやっても面白いのではないかとさえ思う。
もちろん時には「大臣」に答えさせることに意味はあるのだろう。でもそれはすべてではないのだ。それこそ聞くだけであれば裏方同士でやってしまえば済む。もちろん記録として残す必要があればそういったシステムにすればいい。
委員会は議論をする場所であるはずなのだ。揚げ足を取る場所ではないはずだ。そんな小学校の学級会以下の会合であり続けるのだろうか。
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