抗議文がでていたので、取り留めておこう。来年には一応知事選もあるわけだし。
元の記事はこれ。
航空自衛隊小牧基地(愛知県小牧市)の輸送機などが滑走路を使う隣接の「県営名古屋空港」で離着陸料を愛知県に徴収されていることが8日、分かった。徴収額は平成17年から昨年度までで約140億円に上る。専用滑走路ではなく民間航空機と滑走路を共同使用する空自基地は、空自によると全国に7カ所あるが、離着陸料を徴収されているのは名古屋空港だけで、軍用機に離着陸料を科すのは「世界でも例がないのでは」と指摘される。
県名古屋飛行場条例に基づき、空自が昨年度に徴収された離着陸料は8億5千万円。午前7時から午後10時までの空港の運用時間外に離陸すれば時間外離陸料も徴収されている。
県は「有事」で空自機が離着陸しても「離着陸料を徴収する」とし、「滑走路の修繕費などを捻出するため」と説明する。
小牧基地には空自の第1輸送航空隊がある。C130輸送機とKC767空中給油・輸送機を運用し、空輸任務の重要拠点だ。中国による南西諸島侵攻や台湾有事では離島の住民や台湾在住の邦人を輸送することや、空中給油を行う任務が想定される。
名古屋空港は17年の中部国際空港(常滑市)の開港に伴い、設置管理が国から県に移行した。空港を存続させたいという地元の要望からだった。
県営以前は昭和27年から運輸省(現国土交通省)が管理していた。管理は航空管制や消防機能、滑走路の修繕で、県営になる前は国交省が主に担い、空自から離着陸料を徴収していなかった。
国管理から県営に移行する際の経緯を知る防衛省OBによると、政府は自衛隊に管理を移そうとしたが、自衛隊の権限強化につながると反対の声が地元であがった。それを受け、県が管理する案が浮上した。
だが、県が管理しても航空管制と消防機能を担う能力がなく、空自に任された。県は滑走路の維持管理を受け持つことになり、それにより離着陸料の徴収を空自に求めてきた。
防衛省・自衛隊は「航空管制も消防機能も空自に任せながら、離着陸料を徴収するのはおかしい」と強く抵抗したが、県に押し切られた。
政府高官は「国防を担う組織に航空管制などを担わせた上、離着陸料を徴収するというのは世界中で聞いたことがない」と疑問視する。
〈独自〉空自機の離着陸料徴収 名古屋空港 県営化後に140億円、産経新聞、2022/10/8 19:18
記事が事実なのか検証する
航空自衛隊小牧基地(愛知県小牧市)の輸送機などが滑走路を使う隣接の「県営名古屋空港」で離着陸料を愛知県に徴収されていることが8日、分かった。徴収額は平成17年から昨年度までで約140億円に上る。専用滑走路ではなく民間航空機と滑走路を共同使用する空自基地は、空自によると全国に7カ所あるが、離着陸料を徴収されているのは名古屋空港だけで、軍用機に離着陸料を科すのは「世界でも例がないのでは」と指摘される。
県名古屋飛行場条例に基づき、空自が昨年度に徴収された離着陸料は8億5千万円。午前7時から午後10時までの空港の運用時間外に離陸すれば時間外離陸料も徴収されている。
〈独自〉空自機の離着陸料徴収 名古屋空港 県営化後に140億円、産経新聞、2022/10/8 19:18
共用空港(空港法附則第2条第1項:札幌 千歳 三沢 百里 小松 美保 岩国 徳島)ではなく、県営名古屋空港はその他の空港(空港法第2条)に分類される。もちろん県営なのだから、こうなっているのだろう。(参考)
愛知県名古屋飛行場に関する協定の第2条にあるように、防衛庁(当時)は、着陸料の使用に対して着陸料を支払うとある。一方で第7条では、管制業務は防衛相に委任されている。
世界を見て例がないのかは調べる気に盛らなないが、この形態で運用されている空港がここだけなのだから、日本では唯一だろう。協定や県条例はもう15年以上前にできたものだから、今更ともいえるだろう。
だが、県が管理しても航空管制と消防機能を担う能力がなく、空自に任された。県は滑走路の維持管理を受け持つことになり、それにより離着陸料の徴収を空自に求めてきた。
〈独自〉空自機の離着陸料徴収 名古屋空港 県営化後に140億円、産経新聞、2022/10/8 19:18
とあるように、県が維持管理をする以上は、何かしらの費用徴収をすることは順当だろう。県と国で財源は違うのだから、当然の話ともいえる。国が管理している施設を国が使用するのとは違う。別途交付金等でやるのか、使用料にするか、というだけの話だろう。協定で、着陸料という形に収まったのだろう。
結局は地元のせい?
1997年あたりの県の総務企画委員会あたりの議事録を見ていると、「名古屋空港一元化」で議論が活発に行われ、2001年の県企画環境委員会では、名古屋空港をどうしていくかで話し合っている点が見られる。
27:【林委員】
平成13年企画環境委員会、愛知県議会議事録、2001/6/29
着陸帯の権限を持つものが空港管理者となるが、中部国際空港への一元化により、国土交通省は着陸帯が 110haも不要になる。国土交通省は着陸帯について本県に何を求めているのか。
28: 【航空対策課長】
国土交通省は中部国際空港開港時には名古屋空港から撤退し、所管の財産を処分するとのことである。本県としては、国土交通省に対して無償での使用権限の取得を要請しているが、国は困難であるとしている。
29: 【林委員】
GA空港の60haに加え、着陸帯の 110haを加えると約 170haとなるが、取得費は概ねどの程度か。
30: 【航空対策課長】
着陸帯について、その設置管理にGA空港としてどこまで関与できるのか検討しており、取得について、今後、検討していくという段階であるため、価格についてまでは考えていない。
31: 【林委員】
中部国際空港は国が管理する民間空港として現空港のスクラップアンドビルドを基本としているため、地元の自治体、特に本県の負担が大きい。新空港の建設費負担の 300億円に止まらず、スクラップする名古屋空港のGA空港用地等の国有財産の取得を初め、県に多くの負担をかけている。地元自治体にこれほどまでに負担を強いる空港はこれまであったか。
32: 【航空対策課長】
我が国の空港について第1種空港で地元も建設費を負担している空港としては、関西国際空港があり、国、地元自治体、民間の3者で負担する資金スキームとなっている。
廃止される空港を地元で取得した空港としては、コミューター機中心の空港として活用するために取得した広島西空港の例がある。
現名古屋空港の将来構想については現在、様々な課題について検討がなされているが、GA空港として活用するに当たり、本県が用地を取得することになるとしても、空港は地元の財産であり、地域振興の意味からも本県が中心となり、推進していくことであるので、二重の負担を負うという性質のものではないと考えている。
33: 【林委員】
広島西空港の事例については、どの程度県が負担しているのか。
34: 【航空対策課長】
旧空港の用地の大半が県有地であり、投資は約2百数十億円かかっている。新空港の地元負担は県有地以外の部分で全体の3分の1、このうち県が80%、市町が20%の負担となっている。
35: 【林委員】
広島西空港は県有地が大半を占めており、名古屋空港とは事情が異なる。
名古屋空港にはここ10年で78億円を負担している。中部国際空港で応分の負担を負い、名古屋空港の跡地も買えという国の本県に対する要求は例がないのではないか。
36: 【航空対策課長】
国は名古屋空港用地をどうするのかと問いかけているのであり、購入を強制しているのではない。
37: 【林委員】
4月13日の新聞報道によれば、自衛隊基地の拡大に対し、地元2市1町の首長も心配しており、要望があったと聞いている。着陸帯の使用権限を有償・無償に係わらず県が取得できなかった場合には、自衛隊小牧基地が着陸帯を所有・管理し、航空管制も自衛隊が行うこととなり、自衛隊主体の空港になるのではないか。省庁間で協議されていると報道されているが、その内容はどうか。
38: 【航空対策課長】
国土交通省、防衛庁両省庁とも、県等地元の考えを聞いた上で、対応を検討するとしており、現段階では具体的な協議がされていないと承知している。
39: 【林委員】
地元自治体関係者は「一元化後の名古屋空港の管理は県が担うことが一元化を認める前提条件である。」、「防衛庁が管理するとなれば、基地拡充と受け止めざるを得ない。」と述べている。県も同様に理解しているのか。
40: 【航空対策課長】
新空港への一元化に関連し、地元2市1町から、自衛隊基地について、「小牧基地の基地機能を現行以上に拡充強化させないこと。」という要望が出されているが、現在、県においては地元の不安等に応えるため、民間空港が全面に出た空港として存続させるため、GA構想の具体化の作業を鋭意進めているところである。
41: 【林委員】
知事は「管理・運営を防衛庁が将来受け持つことについて、2市1町と共に反対していく考え」であると報道されているが、この考えに変わりはないか。
42: 【航空対策課長】
本年4月12日の地元2市1町の首長と知事との話合いを通して、地元の不安はよく理解しており、今後、民間空港が全面に出た空港として存続させるため、GA空港構想を鋭意推進していく。
43: 【林委員】
知事は防衛庁が着陸帯を管理運営することには反対すると報道しているが、事実か。
44: 【航空対策課長】
地元の懸念、不安を十分理解して欲しいとの要望を国に伝えたということである。
45: 【林委員】
防衛庁が着陸帯を管理することを地元では基地機能拡充と考えているが、県も同じ考えか。
46: 【総合交通監】
着陸帯を防衛庁が管理することにならないように地元とともに国へ伝えた。
47: 【林委員】
着陸帯と管制機能を防衛庁が掌握することは、地元では基地機能の拡充と認識しており、県も同じ認識か。
48: 【総合交通監】
県も同じ認識である。
当時の状況からすると、
国土交通省は、中部国際空港ができるので名古屋空港は不要である。欲しいなら購入して。
防衛庁(当時)は、小牧空港があるから今まで通り使うよ。
2市1町(小牧・春日井・豊山)(と県)は、防衛庁所管だと自衛隊主体で基地拡張だ、民間空港にしたい。
みたいな感じだろうか。そう、これが2001年の話だ。これが記事にある
国管理から県営に移行する際の経緯を知る防衛省OBによると、政府は自衛隊に管理を移そうとしたが、自衛隊の権限強化につながると反対の声が地元であがった。それを受け、県が管理する案が浮上した。
〈独自〉空自機の離着陸料徴収 名古屋空港 県営化後に140億円、産経新聞、2022/10/8 19:18
というところだろう。結局、自衛隊反対!基地拡大反対!という声が勝ったのだといえよう。2003年の知事答弁で、
ところで、名古屋空港の新展開についてでございますが、まず、民間空港と自衛隊基地の関係という点であります。
平成15年9月定例会(第2号)、愛知県議会 会議録、2003/9/22
愛知県では、名古屋空港を条例に基づく県営空港として設置していく方向で進めておりまして、防衛庁は、基本的に民間空港の枠組みの中で自衛隊機の運用を行うことになります。
そうした中で、現名古屋空港の着陸帯は民間空港と自衛隊小牧基地が当時の運輸省と防衛庁との覚書に基づき共同で使用しており、県営空港となった後も、防衛庁は、これまでどおり着陸帯が小牧基地と一体不可分のものとして使えることが必要であるとしております。
こうしたことを踏まえ、県といたしましては、自衛隊が県営空港の着陸帯を基地と一体的に使用できるようにしていく一方、県営空港の円滑な設置管理に防衛庁の協力を得ていく必要があると考えております。そのため、こうした防衛庁との新たな関係を築くため、国土交通省も加えた三者による協定の締結に向け、現在、その調整を進めているところでございます。また、防衛庁の負担や協力に関しましては、自衛隊機の使用実態に見合った費用負担や、小牧基地に十分な能力がある消火・救難業務の実施などを協定に盛り込んでいきたいと考えております。
さらに、着陸帯用地に関する調整についてでございますが、これまでも国土交通省と評価の考え方について議論を進めてきているところでございますが、三者協定に関する協定を進めていく中でも、国有財産の評価基準に基づいて適正に評価されるよう、県として明確に主張をしてまいりたいと考えております。
となる。空港設置の2年前であるから、ほぼ現状の内容であるようにも見える。2004年3月には、今回記事となった着陸料の問題が取り上げられる。
50: 【田中志典委員】
平成16年企画環境委員会、愛知県議会 会議録、2004/3/17
今の名古屋空港のジャンボ機の着陸料は50万円ぐらいだと思うが、防衛庁の着陸料の積算基準は、この民間航空機と同じ基準でということか。
51: 【航空対策課長】
防衛庁の費用負担についての県の基本的な考え方であるが、名古屋空港の着陸帯の共同使用について、これまで防衛庁は、国土交通省と防衛庁という同じ国の内部の省庁間の関係であることから、特段の費用負担を行ってこなかった。しかし、今後は、この関係が県と防衛庁との間の関係となることから、県としては、県営空港の着陸帯に要する費用について、防衛庁が応分の負担を行うことが当然の前提となるものと考えている。
ただ、県営空港の着陸帯を自衛隊の主要な基地と一体として使用するという例は全国で初めてなので、そうした場合の防衛庁の費用負担についてのルールが全くない。防衛庁は、16年度政府当初予算案に、県営空港の着陸帯の使用料として、国が管理する空港を民間機が利用する場合の料金として国土交通省が定めている着陸料と同じ基準で算出した額を盛り込んでいる。この国土交通省が定めている着陸料は、国の空港を一般に利用している航空会社等の民間機の料金として、原則として全国の国の空港一律の額で、政策的に設定されたものである。自衛隊が基地と一体として民間空港の着陸帯を使用する場合の防衛庁の費用負担について、こうした民間機の着陸料と同じ基準で算出することは、県としては、到底受け入れることはできない。県としては、自衛隊機による県営空港の着陸帯の使用実態に見合った適切な負担割合により防衛庁が応分の負担をしていただきたいと協議を進めている。
52: 【田中志典委員】
これから防衛庁に対して県の考え方を今まで以上に説明しないとうまくいかないと思うが、そういう考え方でいいのか。
53: 【航空対策課長】
防衛庁の費用負担については、具体的には、着陸帯に係る経費を、自衛隊機と民間機の着陸帯の使用割合に応じて算定した額の負担をすべきものと考えている。この着陸帯の使用割合については、自衛隊機、民間機それぞれの着陸帯の使用実態、具体的には、離着陸回数と航空機の重量や騒音の大きさに基づき、総合的に算定した割合とすべきものと考えている。
そこで、まず離着陸回数については、名古屋空港における自衛隊機のここ数年の年間離着陸回数は、年間約1万2,000回前後で推移し、県営空港となった後の民間機は年間約4万回前後と見込んでおり、回数は民間機の方が多くなる。一方で、航空機の重量や騒音については、小牧基地の代表的な輸送機であるC130の重量が71トンであるのに対し、県営空港を本拠地とすることを検討中のジェイエアが使用する航空機のCRJは24トンであり、騒音についてはもっと大きな開きがあるなど、航空機の重量、騒音については、自衛隊機のほうが圧倒的に大きくなる。全体として総合的に見ると、自衛隊機による着陸帯の使用割合は、民間機の数倍になるものと考えている。こうした考え方を防衛庁にしっかり説明して協議している。
54: 【田中志典委員】
県営空港の着陸帯用地は県が維持管理していかねばならない。着陸料にはメンテナンス費用も含まれると考えてよいか。
55: 【航空対策課長】
国土交通省が定めている着陸料は全国一律で決めており、例えば名古屋空港の着陸帯の維持管理コストから算出しているものではない。全国の主要な空港で同じ額の着陸料を徴収して、それが国の空港整備特別会計に入り、それに国の一般会計や航空機燃料税などが入ってきて、その経費で国の空港の維持管理もすれば、空港の拡張整備にも使う。国の着陸料は、着陸帯のコスト回収という計算で成り立っているものではない。
56: 【田中志典委員】
重量の大きいC130Hの基地である小牧基地の場合、F2、F15、T2、T4といった重量の軽い戦闘機、練習機が飛ぶ他の自衛隊基地とは状況が異なり、滑走路が傷みやすい。そうしたことも含めて防衛庁と交渉すべきであると要望しておく。
57: 【企画振興部長】
着陸帯は、小牧基地と一体不可分である。しかし、政府予算案の着陸料の金額は、民間航空機と同じ積算基準によるものであり、現実をわきまえて、これまでの使い方、今後の使い方が民間の航空会社とは違うということをはっきりと主張し、応分の負担を求めていきたい。
開港1年前でこれなの?と思えなくもないが、こんなもんなんだろう。県の言い分としては、県営で他からコスト回収ができないから、国の基準より高くしないと無理だよ。お金払ってくれないと無理、みたいな感じだろうか。
なお、管制に関しては、国の専管事務だから県は知らん、とのことだ。
54:【立松誠信委員】
平成16年企画環境委員会、愛知県議会 会議録、2004/12/9
県営空港の管制はどうなるのか。
55: 【航空対策課主幹(空港計画第一)】
航空管制については、日本中、一元的に管制されており、国土交通大臣の権限である。一部、防衛庁長官にも委任することができるとなっており、中部国際空港、名古屋空港、各務原を合わせた広域の航空管制については、中部国際空港において、国土交通省が実施する。名古屋空港の飛行場管制については、飛行場を中心に約9キロについては、国土交通省から委任を受けた防衛庁が、航空自衛隊小牧基地に管制隊を設けて、自衛隊で実施する。国の専管事務であり県の負担はない。
結局のところは、「中部国際空港」を作る条件として、名古屋空港廃止であったけど、地元が残したいって言い始め、県営となり、管理するから金をくれといった形だろうか。
議論の当事者はもういないのだろう
2000年代前半といえば、もう20年前の話だ。そもそも当事者はもうその場にはいないし、伝聞や資料でしか伝わっていないのではないだろうか。
防衛省・自衛隊は「航空管制も消防機能も空自に任せながら、離着陸料を徴収するのはおかしい」と強く抵抗したが、県に押し切られた。
〈独自〉空自機の離着陸料徴収 名古屋空港 県営化後に140億円、産経新聞、2022/10/8 19:18
政府高官は「国防を担う組織に航空管制などを担わせた上、離着陸料を徴収するというのは世界中で聞いたことがない」と疑問視する。
自衛隊の言い分からすれば、そもそも防衛省所管にしたかったし、ほぼこっちでやっているのに何でお金かかるのとはなりそうな話ではある。結局のところは「県営」にこだわらざるを得なかったところが問題だったのだろう。
ただ「県営」を呑んだんなら金を払えという、愛知県の言い分もその通りではあろう。揉めるぐらいなら、国に戻せばいいんだろうけど、地元が反対するし、このまま維持のほうが楽なのに、産経はなんでこんなのを突然出してきたんでしょうね。
コメント