特技は「人の話をよく聞く」ことだと発言していた岸田氏。総裁選でも「聞く力」はアピールしていたし、総理になってからも発言しているが、このままでは「聞く」だけで終わるのではないだろうか。
家庭連合への質問権行使
岸田首相は17日の衆院予算委員会で旧統一教会(世界平和統一家庭連合)について調査を実施するため「質問権」を行使することを表明した。 岸田首相は17日の衆院予算委員会で、自民党の宮﨑議員の質問に対し、「政府としては、旧統一教会に対する宗教法人法に基づく質問権の行使による事実把握、実態解明などを進めていかなければならない」と述べ、「質問権」を行使することを表明した。 さらに被害者救済に向けた相談体制の強化、今後に同様の被害を生じさせないための消費者契約の法制度の見直しも進めることも明らかにした。 また岸田首相は「閣僚を含む多くの議員が旧統一教会や関連団体と接点を有していたことが明らかになり、国民の政治への信頼を傷つけたことに対して率直にお詫び申し上げる」と述べた。 また永岡文科相は「質問権」の行使について、基準を明確化する考えを示した上で、宗教や法律の専門家などによる会議を設置し、25日にも検討を開始すると述べた。
【速報】岸田首相 旧統一教会に対する「質問権」行使へ 衆院予算委で表明、FNNプライムオンライン、2022/10/17 10:48
「人の話をよく聞く」ことが得意な岸田氏は、ついに家庭連合への質問権を行使するらしい。支持率も下落の一途をたどっているし、世論も与野党もメディアもある程度は問題しているのが明白だったのに、3か月もかかったのは何だったのだろう。参院選が終わり、臨時会を3日開いただけで、10月に入ったのだ。閉会中審査流行っているものがあるとはいえ、国会が開かれていたわけではないのだから、やれる期間、考慮する期間はあったはずだ。
しかし、今になって「質問権行使」を表明し、25日に検討を開始するらしい。結局、今から動くのだ。聞くのはいいが、いささか決断するのが遅いのではないだろうか。国葬議ではあれだけ早く決断できたのだから、「質問権」を行使するぐらいならできるだろう。別に解散命令を出すわけではないのだ。
昨日のネットニュースで報道され始めているので、実質的には昨日決まったことなのだろうが、宗教法人法の1996年改正法に盛り込まれた質問権。96年であるから、オウム真理教による一連の事件を受けて改正されたものであるが、使われたことがなかった。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡り文化庁は、宗教法人法に基づく「質問権」を行使する基準を明確にする必要があるとして、専門家による会議を立ち上げる方針を固めた。永岡桂子文部科学相が17日の衆院予算委員会で表明した。
宗教法人法「質問権」明確化へ有識者会議 文化庁、産経新聞、2022/10/17 11:31
まぁ結局のところ、ザル法だったんだろう。宗教法人の解散命令も、オウム真理教と宗教法人本覚寺しか今までできていない。新世事件で、一部関与が認定されたにもかかわらず宗教法人法上は何もしなかったわけだ。この時点で紀藤弁護士が求めているように、調査ぐらいはするべきだったのだろう。でもしなかったのだ。(逮捕時点は麻生内閣、地裁判決(確定)時は鳩山内閣)
当時の民主党もこのあたりを攻めれば、まだ党があったかもしれない。彼らにもチャンスはあったのだろう。
宗教法人法における質問権
宗教法人法第78条の2に規定がある。
(報告及び質問)
宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)
第七十八条の二 所轄庁は、宗教法人について次の各号の一に該当する疑いがあると認めるときは、この法律を施行するため必要な限度において、当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関し、当該宗教法人に対し報告を求め、又は当該職員に当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対し質問させることができる。この場合において、当該職員が質問するために当該宗教法人の施設に立ち入るときは、当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者の同意を得なければならない。
一 当該宗教法人が行う公益事業以外の事業について第六条第二項の規定に違反する事実があること。
二 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証をした場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていること。
三 当該宗教法人について第八十一条第一項第一号から第四号までの一に該当する事由があること。
2 前項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させようとする場合においては、所轄庁は、当該所轄庁が文部科学大臣であるときはあらかじめ宗教法人審議会に諮問してその意見を聞き、当該所轄庁が都道府県知事であるときはあらかじめ文部科学大臣を通じて宗教法人審議会の意見を聞かなければならない。
3 前項の場合においては、文部科学大臣は、報告を求め、又は当該職員に質問させる事項及び理由を宗教法人審議会に示して、その意見を聞かなければならない。
4 所轄庁は、第一項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させる場合には、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。
5 第一項の規定により質問する当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に提示しなければならない。
6 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
つまり政府は、
一 当該宗教法人が行う公益事業以外の事業について第六条第二項の規定に違反する事実があること。
二 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証をした場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていること。
三 当該宗教法人について第八十一条第一項第一号から第四号までの一に該当する事由があること。
のいずれかに該当すると判断したのだろう。
一は、公共事業以外の収益が「当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しない」こと。韓国への送金を指すのだろうか。(宗教法人の外国組織はこの法律上どうみなすんだろう)なかなかこれは怪しいし、関連団体が使えるのであれば、基本該当できないようにも思える。
二は、「当該団体が宗教団体であること。」又は「当該合併が第三十五条第二項の規定に該当する場合には、当該合併後成立する団体が宗教団体であること。」に該当しないことを指すが、合併していないだろうから前者だが、一応宗教団体ではあるだろう。(というか宗教団体じゃないという判断なんか無理じゃないか?)
三は、解散命令に該当する事項に該当する場合だ。今回の場合はここなんだろう。
(解散命令)
宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)
第八十一条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
二 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。
三 当該宗教法人が第二条第一号に掲げる宗教団体である場合には、礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたつてその施設を備えないこと。
四 一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること。
五 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証に関する認証書を交付した日から一年を経過している場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていることが判明したこと。
公共の福祉を害するあたりは、何とでも解釈できるだろうから、そのあたりだろうか。宗教団体の目的は法律上「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする左に掲げる団体をいう。」と定義されているので、献金が多すぎることはこの目的に反しているといえるのかもしれない。
文部科学大臣は、なぜ専門家による会議を立ち上げるのか?
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡り文化庁は、宗教法人法に基づく「質問権」を行使する基準を明確にする必要があるとして、専門家による会議を立ち上げる方針を固めた。永岡桂子文部科学相が17日の衆院予算委員会で表明した。
宗教法人法「質問権」明確化へ有識者会議 文化庁、産経新聞、2022/10/17 11:31
何か会議を立ち上げるらしい。
が、質問権規定(宗教法人法第78条の2)を見る限り、質問しようとするときは「あらかじめ宗教法人審議会に諮問してその意見を聞かなければならない」し、「文部科学大臣は、報告を求め、又は当該職員に質問させる事項及び理由を宗教法人審議会に示して、その意見を聞かなければならない」とされている。つまり、会議を立ち上げるのではなく、「宗教法人審議会」に諮問し、質問内容が正当であるか意見を聞けばいいはずだ。
宗教法人審議会は、宗教法人法第71条の規定により、文部科学省に置かれている。非常勤の委員とはいえ、置かれているのだ。審議があるときに設置するのではなく常設されているはずだ。
そう考えると、そもそも審議するべき組織はあるわけで、専門家による会議を立ち上げる必要があるのか疑問だ。
岸田氏は「宗教法人法に基づく質問権」を行使するのであれば、「文部科学大臣は宗教法人審議会に諮問して意見を聞かなければならない」のが法律上のプロセスだ。
まぁ宗教法人審議会が形骸化しているのかもしれないが、あえて別途会議を立ち上げずに、諮問すればいいだけなのではないだろうか。
ちなみに宗教法人審議会の議事録は下記の通りで、平成24年、平成26年、平成28年、令和2年と開催されていない年もある。
審査請求があれば開催するからで、
「審査請求がある→会議を開いて小委員会を作る→小委員会の報告を受ける」の流れなので、どこかが審査請求をすると2回は開かれるのだろう。

内閣が必要なのは「優柔不断」ではなく「決断する」こと
結局は、ここに尽きるのだろう。
聞くのはいいことだ。それを否定してはいけない。ただ、内閣総理大臣は日本の政治のリーダーシップをとらなくてはいけないのだ。
意見を収集するのは、別組織がやるべきだろう。そのために各省庁があり、各大臣がいるわけだ。縦割りにすればいいというわけではないが、専門部隊である省庁を使う権限はあるはずだ。

子供向けに首相官邸が出しているサイトのように、内閣は方向性を示すことが仕事なのだから聞くのではなく、発言・行動していただきたい。
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