毎日新聞は22、23の両日、全国世論調査を実施した。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について、岸田文雄首相は宗教法人法に基づき調査すると表明した。政府が旧統一教会への解散命令を裁判所に請求すべきかを尋ねたところ、「請求すべきだ」との回答は82%で、「請求する必要はない」の9%を大きく上回った。
旧統一教会の解散命令「請求すべきだ」82% 毎日新聞世論調査, 毎日新聞, 2022/10/23 16:09
毎日新聞の世論調査
冒頭のように世論調査で「政府が旧統一教会への解散命令を裁判所に請求すべきか」を尋ねたらしい。
この問いに果たして意味はあるのだろうか。
政府与党の批判ができそうな問いを作っているだけなんだろうが、この質問を世論調査でする意味があまりわからない。そもそも論点は、「宗教法人法に基づいて解散命令の請求ができるかどうか」でもめているのだから。
国民目線からすれば、感情論で解散するべきだでいいんだろうけど、そういうわけではないはずだ。もちろん、家庭連合が宗教法人として存在し続けることがよいとは個人的にも思えないのは事実ではあるが、法のよって裁かなければいけない。
(解散命令)
宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)
第八十一条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
二 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。
三 当該宗教法人が第二条第一号に掲げる宗教団体である場合には、礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたつてその施設を備えないこと。
四 一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること。
五 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証に関する認証書を交付した日から一年を経過している場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていることが判明したこと。
結局宗教法人法を変えるしかないのでは?
国会で、自民党との関与をいちばん最初に指摘されているのは福田赳夫首相時代までさかのぼる。
○福田内閣総理大臣 いつだったかははっきり私覚えておりませんけれども、希望の日と申しましたか、あるいは何という名前の会でありましたか、文鮮明というキリスト教の偉い人が来て、そして講演もする、ぜひ聞いてもらいたい、こういう話がありまして、私もそういう宗教の話なんか聞くのは好む方でありますから、そこで参加いたしました。そして、参加しましたら、私にあいさつをせい、こういうことになりまして私はあいさつをした。そのあいさつは、これは私の連帯と協調論です。つまり、文鮮明という人がキリスト教に根を持った新興宗教、それの指導者であるという話であり、キリスト教といえば愛を説くわけですから、人類愛を。私の連帯と協調と全く相通ずるものがある。私はそのとき、私の人間愛というか、助け合い、補い合い、そして責任の分かち合い、これこそが人間社会における最高の指導原理でなければならぬということを力説したわけです。それは当時の記録もありますから、必要があればよくごらんをお願いします。
○石橋(政)委員 時間が来たそうですからこれでやめますが、最後に、先ほど総理あてに父母の会から出されました陳情書の中に、こういう文章が含まれていることを御紹介しておきたいと思うのです。「私達の仲間はこの苦しみを受けた時、一番先に自民党員に駆けつけました。一々名前は申し上げませんが、多くは儀礼的な挨拶だけで、中には「自民党では、この問題はタブーです」とハッキリ断られた人も居ります。」こういうふうに書いてあります。自民党とこの統一教会、国際勝共連合、希望の日フェスティバル、このいうものが一体どうつながっているのだろうか、この疑問は多くの人が持っているのです。これに明快に答えるためにも徹底的な調査をしていただくように心から望んで、質問を終わりたいと思います。(拍手)
第80回国会 衆議院 予算委員会 第2号 昭和52年2月7日
もちろん、当時は宗教法人法は現行法ではないが、昭和52年にはすでに問題視されている。まぁ集団結婚式、合同結婚式とかが話題に出たのがこの時代だ。このあたりから昭和63年にかけてはたびたび統一教会の名前が国会において登場する。
しかし、平成になってからはそれがなくなり、平成で出てくるのは平成7年のことである。オウムの一連の事件が起こったからであろう。
この時、「第134回国会 参議院 宗教法人等に関する特別委員会」で宗教法人法の改正について審議が行われることとなる。(参考)ここで、統一教会は再三上がっているし、霊感商法の話題も出ている。平成8年には訪問販売法あたりの話題でも出てくるし、平成23年にはストーカー規制法の話でも統一教会の名前は出てくるのだ。
これだけ会議録に上がっているのだから、政府は承知しているものだと考えるべきだ。認めてないとはいえ、誰もが問題がある組織であることは認識しているはずなのだ。
結局、統一教会関連で犯罪が行われている可能性は、何十年も指摘されているのだ。解散命令も、今回話題となった質問権ももう20年はあるわけだ。この間誰も質問をすることはなかったし、解散も過去で2回しかない。
そう考えると結局「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。」となっている条文が悪いのではないだろうか。
裁判所が解散を命ずることができるだけなのがいけないのではないか。そもそも不法行為を行っている団体が宗教法人として適格なわけがないのだから、解散を命じなければならないあたりにするべきではないか。そもそも、職権で解散を命ずることができるわけだから、統一教会関連の裁判で解散を命じてもいいわけで。
また、「所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求」という点も条件が定まっていないのがよくない。結局、ある時にしなければならないと決めないと彼らはやらないのだ。努力義務のものなんて後回しにされるのだ。裁判所が、請求又は職権で理由があるときに、解散を命じる。
「所轄庁、利害関係人若しくは検察官」は、請求しなければいけないわけでもないのだ。裁判所も職権で解散を命じなければならないわけではないのだ。そうなってくると、誰もがボールを持たない状況が生まれるのだ。
結局、宗教法人はザル法なんだろう。
世論調査が出てもなにもならない
と、話がそれたような気がするところだが、世論調査でどうであろうが利害関係人でもないし何ら意味を持ち合わせない。今回の場合は、統一教会自身の事件から話が膨らんでいるわけでもないから、所轄庁が動くかどうかだけの話だろう。
そこに世論調査が影響を及ぼしてはダメだろうし、現行法に基づいて粛々と対応するしかないだろう。
そもそも解散命令が出たとしても、宗教法人格が失われるだけであって、団体ではあり続けるのだから、結局はいたちごっこなのかもしれない。
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